5.4 陶芸作品群4


(1) 概要

陶芸を始めてから2年半経ちました。まだあれこれ試行錯誤しながら続けており、自分の型となるものがまだ定まりません。しかし、この半年やっと青磁釉を使いあれこれ作陶するようになりました。まだ意図したものから外れる場合が多いですが、それなりの結果が出て、それを糧に作陶技術向上に努めております。青磁の器の持つ優美な気品に憧れ陶芸を始めましたが、まだそのような器を作るのはだいぶ先になりそうです。しかし、奥の深さを感じるとともに少しずつではありますが手応えも感じるようになった昨今でもあります。
以下はこの半年の作品群です。まだ人様にお見せできるような作品ではありませんが、経過の整理のためまとめてみました。


        * 下にスクロ−ルすると作品写真がご覧になれます


作品番号
名称
35辰砂青色ゴブレット
製法 土:スイヒ土
・玉作り方式、本体と足合体
・釉薬:辰砂
・焼成:酸化焼成
コメント ・辰砂は銅(約1.5%)とすずを含む釉薬で、酸化焼成で青色、還元焼成できれいな赤色を示します。
・還元焼成時は銅が揮発し易いため透明釉薬を重ねます。そのため釉薬が剥がれやすく、今回は赤色ゴブレット製作に失敗しました。
釉薬の掛け方に一工夫が必要です。
作品番号
名称
36.化粧土絵付け花器
製法 ・土:スイヒ土
・紐積み上げ方式、板押し成形
・有色化粧土スポンジ塗布
・酸化焼成
コメント ・有色化粧土を使用し、グラディエ−ションを付ける技法習得のため製作
作品番号
名称
37.青磁紅葉葉吹き墨茶碗
製法 ・土:スイヒ土
・紐積み上げ方式
・下絵付け−−内側:モミジ葉呉須吹き墨、外側:呉須線引き
・釉薬:外側・・青磁釉, 内側・・透明釉
・還元焼成
コメント ・吹き墨技法はリアル差が再現できる絵付け技法である。
・青磁の色は中国宋代からいろいろ試され追求されている。釉薬の鉄分濃度や還元雰囲気の僅かな違いで色合いに差が出る難しい釉薬である。秘色と言われる所以である。
      同   上
・外壁の青磁色にもう少し深みと透明感が欲しい。
作品番号
名称
38.呉須陰刻線白鉢
製法 ・土:半磁器特白土
.玉づくり手びねり
・下絵:陰刻呉須埋め込み
・釉薬:薄透明釉薬ずぶ掛け
・酸化焼成
コメント ・白い器の生かし方研究
同 上
作品番号
名称
39.白象嵌黒鉢
製法 ・土:黒陶土(黒色)
・紐積み上げ方式
・象嵌白化粧土埋め込み
・釉薬:薄透明釉薬ずぶ掛け
・酸化焼成
コメント ・陰刻された溝に白化粧土を埋め込む象嵌技法は黒地上ではよく映える
・黒い器の生かし方研究
作品番号
名称
40.瑠璃色植木鉢
製法 ・土:黒陶土(黒)
・紐積み上げ方式
・外壁飾り削り線入れ
・釉薬:瑠璃釉薬ずぶ掛け
・酸化焼成
コメント ・植木鉢のため焼成温度を若干低く設定、そのため瑠璃釉薬の溶解がやや不足気味となった。この溶解不足気味が色合い、地肌に独特の深い味を醸し出している。予期せぬ好結果である。
洋花を入れた瑠璃色植木鉢
山野草などにもマッチするように思われる
作品番号
名称
41.酒器(徳利、ぐい呑み)
製法 ・土:赤土
・徳利:紐積み上げ方式
 ぐい呑み:玉作り手捻り
・釉薬:織部釉(外壁)+わら灰釉(内壁、外壁上部)
・酸化焼成
コメント ・わら灰釉薬の流れ、織部釉薬との重ね色の変化を狙った
作品番号
名称
42.青磁呉須絵付け茶碗(1)
製法 ・土:赤土
・紐積み上げ方式
・下絵:呉須線引き
・釉薬:青磁釉ずぶ掛け
・還元焼成
コメント ・土と釉薬の組み合わせで色が大きく変わる。赤土の場合、くすんだ色合いを呈する。
作品番号
名称
43.青磁呉須絵付け茶碗(2)
製法 ・土:赤土
・紐積み上げ方式
・下絵:呉須線引き
・釉薬:青磁釉(外壁)+わら灰釉(内壁、外壁上部)
・還元焼成
コメント ・外壁上部わら灰釉が青磁釉下地のため流れが少ない。
・土と釉薬間の組み合わせにより微妙に溶け具合、色調が異なる。予想と異なり、まだまだ経験不足を痛感する。

作品番号
名称
44.三彩瓶子
製法 ・土:スイヒ土
・紐積み上げ方式
・釉薬:三彩釉(黄、茶、緑)+透明釉
・酸化焼成
コメント ・三彩と言えば中国の唐三彩が有名である。当時の色釉は主体が鉛釉からなり呈色剤として鉄(黄、茶)、銅(緑)を使用した低温焼成釉である。しかし現在は鉛釉が使えないため高温焼成釉となり色合いが鉛釉と微妙に異なるようである。
作品番号
名称
45.志野風抹茶茶碗(その1)
製法 ・土:五斗蒔土(白)7:赤土3の混合土使用
・手び練り技法
・下絵:鬼板(紅柄より鉄分少)で山文様
釉薬:平津長石ベ−スの志野釉、厚めにずぶ掛け
・還元焼成
コメント ・成形時コテはあまり使わず手で仕上げ、形状は胴が立ち上がる半筒型、底中央に茶溜まり作製、
・表面にピンホ−ルが出て志野風になったが、先人の作品に比べると今一つ風格がまだ足りない
志野風抹茶茶碗と小鉢
・志野風抹茶茶碗の作製は陶芸を試みる者なら誰でも挑戦する題材のようです。これは「志野」と言う名前の響きが美しためと思われます。
・しかし、調べてみると「志野」とは地名でもなく、人名でもなく由来が定かでないようです。焼かれたところは美濃の東部のようですが謎多き焼き物で、これが一層魅力をかきたてているようです。
作品番号
名称
46.志野風抹茶茶碗(その2)
製法 ・土:赤土
・手び練り技法
・下絵:紅柄線引き文様
・釉薬:紅志野釉ずぶ掛け
・還元焼成
コメント ・素朴な紅志野の色合い、文様を狙い製作、
・紅柄の色会いが
やや強く出過ぎた
同  上
・底面の茶溜まり
同  上
・高台のようす・・・大胆な高台としている
資料作品:青磁素文輪花形碗
   (大阪府立東洋陶磁美術館蔵
・朝鮮の高麗青磁の系譜を見るとき必ず11世紀の代表作として上げられる作品である。中国・北宋の「汝窯」の技術を導入し、それを消化して新たな繊細な優美な形に仕上げた、いわゆる「高麗化」の器である。特に、青磁の色は北宋の「秘色」から一段と明るいカワセミの羽の色合いとも言われる色調の「ヒ色」へと変化しております。

資料作品:高麗青磁扁平大壺
   (韓国・地泉作・・・2001年入手)
・現在の韓国の作家たちが作る高麗青磁は更に深みと青味をました器を多く作っております。その一例です。
・青磁作陶に当たってこれら青磁の器が示す色合い「ヒ色」は目標とする色です。
作品番号
名称
47.青磁呉須文様抹茶茶碗
製法 ・土:もえぎ土
・手び練り技法
・下絵:呉須山文様
・釉薬:青磁釉ずぶ掛け
・還元焼成
コメント ・青磁釉ともえぎ土の組み合わせにより透明感のある青磁色がやっと得られた。
・青磁の器によく見られる貫入は発生していない。
作品番号
名称
48.青磁呉須山文様鉢
製法 ・土:もえぎ土
・紐積み上げ技法・・丸鉢成形後四角鉢に成形
・下絵:呉須山文様
・釉薬:青磁釉ずぶ掛け
・還元焼成
コメント ・鉢壁立ち上がり部を凹ませ四角鉢に成形加工し特徴を出した。
・作品47を参考にして制作。予期通りの透明感のある上品な色調が得られた。
作品47と作品48の青磁の器
・青磁色が安定して得られることが確認された。
・先人の青磁の器が持つ、気品や風格にはまだまだ及びません。
・今後、微妙な青磁色の調整や貫入の制御などの作陶条件究明に更に挑戦して行きたいと考えております。






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